「中高年のSEXを考えるフォーラム」
有田 治
老人ホームとひと言でいっても、その形態は色々ある。重度の要介護老人が多数を占める6人部屋共同生活の施設から、完全個室型の「マンション風」施設まで多種多様だ。
老人ホームでの「性」の実態はなかなか表面化しない。なぜなら入所した高齢者の家族があまり面会に来ないからだ。
また、入所者の家族や施設職員も、高齢者の「性」に対していわゆる“タブー”とする傾向があるからだ。
A雄さん(79歳)、B子さん(80 歳)は老人ホームで初めて出会い、お互いに恋愛感情を持つようになった。
A雄さんは結婚歴があるが15年前に妻を亡くしてからはずっと独り身であった。
B子さんは長い間、小唄の先生をしていて、一度も結婚はしていない。
二人は施設内の人目につきにくい場所で手を握ったり、やさしく抱き合ったりした。一部の入所者や職員たちは「施設内の風紀を乱している!」と苦言を呈していたが、本人たち「ここは学校じゃない。私たちの生活の場なんだから、好きな人と一緒に過ごすのは当たり前のことじゃないか!」と引き下がらなかった。
結局ふたりは入籍し、施設近くのアパートに移り住むことになった。
C雄さん(72歳)は両足に障害があり車椅子生活だ。週一回のお色気深夜番組を見ながらのマスターベーションが楽しみのひとつ。見回りの職員が近づくとそっとテレビを消すという。
D子さん(67歳)は若い頃、風俗店で働いていた。
男性入所者に言い寄られても悪い気がせず、相手によっては肉体関係を持つようになった。
男性は夜中にこっそりとD子さんの部屋に入ってきて体を重ねる。
ある夜、職員が部屋に入ると、D子さんと男性入所者のセックス現場を目撃した。
D子さんの娘と、男性入所者の息子が呼ばれて職員から厳しく注意された。D子さんは娘から「年甲斐もなく恥ずかしいことしないでよ!こんなことで呼び出されて怒られる私の身にもなってよね!」と責められたという。
地方の警察署長だったE雄さん(77歳)は車椅子生活でその上紙おむつである。いつも痴呆の状態ということではなく、たまに粗相をしてしまうのだが、職員の便宜上、紙おむつをあてがわれている。
E雄さんは月に1、2度トイレでマスターベーションをする。自分でしっかり紙おむつを装着できないので職員にとがめられる。そのたびにE雄さんは恥ずかしく惨めな思いをするという。
F子さん(81歳)は施設内で男性入所者を相手に売春をしていた。
一回の料金は数百円。
F子さん曰く「この年になって、セックスの本当の気持ちよさが分かった。これが人生最後のセックスかもしれないと思うと自然と体が熱くなる!」と少し興奮した口調でいった。
ある老人ホームにダンディーな男性が入所してきた。“ちょいワルおやじ”というよりも“ちょいワル老人”といった感じか。すると数名の女性入所者が突然オシャレに気を遣い始めたという。
老人ホームで「性」に関する現象を見るのは決して珍しいことではないのである。
(つづく)
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