「糖尿病で体が溶けていく?」
医療ジャーナリスト 長谷川淳一
西暦1世紀頃に、カッパドキア(現在のトルコ)のギリシャ人医師アレタエウスが糖尿病患者を詳細に観察して、次のように書き残している。
「糖尿病は恐ろしくも不思議な病気で、患者の肉や手足は尿の中に溶け出してしまう。その尿はとどまることを知らずまるで水道の蛇口のようだ。この病気は慢性的なものであり、徐々に起こるが、いったんこの病気が確立されてしまうと患者はおよそ短命だ。体の溶け具合は急速で、苦痛に満ちた死もまた早足でやってくる。生きている間も苦痛な日々だ。いくら水を飲んでも喉の渇きは癒されない。もし水を飲ませないと口はカラカラに渇き、体から水分が失われ、内臓はしなびてしまい、吐き気と不安感と焼けるような乾きが襲う。糖尿病患者はまるで火に焦がされるようにして死にゆく。」
現代の医療から見れば不正確な部分も多々あるが、1900年も前にこれほど糖尿病について的確な観察と記録を残しているとは驚きだ。
まるで体が水分を吸い上げるように内臓がひからびていく事から、ギリシャではこの病気を「サイフォン」を意味するギリシャ語「ディアベテス」と名付けた。
これが現在の病名「ダイヤベティーズ・メリトゥス(Diabetes mellitus)」の語源となった。
※メリトゥスはギリシャ語で「ハチミツの甘さ」。
糖尿病とは分かりやすく言うと「高血糖病」のことだ。血糖値が高くなるということはどういうことなのか。
血液の中に栄養(糖分)が満ちあふれている。しかしその糖分を体が利用できていない。利用できないから血液中にどんどん貯まっていく。
体は栄養(糖分)を求めて甘いモノを欲する。血液中に糖分が増えると水分が欲しくなるが、いくら水を飲んでも糖分は体に吸収されることなく血液中に留まり、腎臓で処理しきれなくなった糖分は尿中にあふれ出す。
いくら栄養を摂取しても、その栄養を細胞が取り込んで利用できなければ、体はまるで飢餓状態のようになり、自分の肉を溶かしてでもエネルギーに変えようとする。だから糖尿病で体が溶けてゆくのだ。
糖尿病の治療法が確立されるまでの間、人類にとって糖尿病は最大の苦痛を伴う死の病気だったのだ。
それは昔の話だって?いやいや、とんでもない。現在でも日本人死亡率の約60%は生活習慣病が原因と言われ、その“根本原因”が糖尿病の場合が一番多いとされている。
(つづく)
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糖尿病で日本は滅びる |
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